「ビオワインは二日酔いしないから大丈夫」
といって、お酒をすすめられた方いらっしゃいませんか?
ビオワインを飲んでも二日酔いしない理由としていわれているのは、だいたい次の2つです。
1) 無農薬の有機農法で育てたぶどうで作られているから。
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これについては「ビオワインとは一体なに?」をご覧下さい。
2) 酸化防止剤や亜硫酸塩が添加されていないから。
だそうです。
でもちょっと待って!
それって本当!?
それじゃ、1)から考えてみましょう。
無農薬、有機農法で育てたぶどうで作ったワイン=ビオワイン
この定義はご理解いただけてますね。
では、農薬や化学肥料を使って育てたぶどうでワインを作るとどんな悪い影響が出るのでしょうか?
どちらも多量に残留していれば、人体に多大な害をもたらすことはいうまでもありません。
ただし、このことは何もワインに限ったことでなく、どんな食品でも同様ですね。
農薬などのおかしなものが含まれていれば、
翌日でなく飲んだその場で気分が悪くなるのではないでしょうか?
ですから、1)の理由でビオワインが二日酔いにならないとは断定できないと思います。
もちろん化学物質に敏感な方もいらっしゃることでしょう。
そういった方が、ビオワインとその他のワインを飲み比べて実際二日酔いにならないとおっしゃるのであれば
完全否定はできませんが、一般論だとお考え下さい。
厄介なのは2)です。
酸化防止剤や亜硫酸塩が添加されていないから。
まず、こういわれてビオワインをすすめられた方、はなからこの話を疑ってください。
「酸化防止剤や亜硫酸塩」 これの意味するところは、
酸化防止剤
&亜硫酸塩
酸化防止剤
or亜硫酸塩 のどちらを意味しているのでしょう?
どちらも不正解なんです。
日本ではワインに添加して良い酸化防止剤は亜硫酸塩のみとされているため、
ワインについていえば、酸化防止剤=亜硫酸塩 なんですね。
ですから、2)をいうのであれば
「ビオワインには酸化防止剤の亜硫酸塩が使われていないから二日酔いにならないよ」
なんです。
これには、上記アンダーラインのところに既に嘘があるのです。
ビオワインの定義を思い出してください。
そうなんです。
「ビオワインに酸化防止剤を使ってはいけない」
とはなってないんです。
というのも、ワイン作りに酸化防止剤は必ず使われているんですよ。(注1)
ワイン作りの過程で「醸造」というものがあるんですが、これは樽に詰めたぶどうに培養酵母を加え
アルコール発酵させるというものです。
このとき、発酵のスピードを調整したり、ぶどうについたカビを消滅させたり、細菌を殺菌するために
亜硫酸塩が使われています。
考えてみてください。手塩にかけて育てたぶどうを樽に入れて熟成している間に
細菌やカビで台無しになってしまったとしたら……。
次にビン詰めの際に、亜硫酸塩を少量加えます。(注2)
これは、ビンの中でワインの発酵を抑えるためです。
出荷したばかりの新しいワインは残留酵母のせいで発酵のスピードが早く、
例えば、海外から空輸をしている短い時間に発酵してしまいビンを割ってしまうほどなんです。
さて、どうして酸化防止剤(亜硫酸塩)がワインに添加してあるかご理解いただけましたか?(注3)
そうすると2)の「ビオワインには酸化防止剤の亜硫酸塩が使われていないから二日酔いにならない」
というのは根本から変な話になってしまいますね。
それでも、「ビオワインは二日酔いにならない」という言葉をブログやSNSでよく見かけますね。
これは、ビオワインを売り込みたいショップやレストラン発信の情報に少し踊らせれているのではないでしょうか?
もちろんそんなお店はごく一部であって、大半のワインショップは正しい情報を伝えてくれていると思います。
ビオワインを楽しむとき「二日酔いしないから」飲むのではなく
「農薬も化学肥料も使わず、人の手で大切に育てられた、思いの詰まったワインなんだな」
と思いを馳せて飲んだほうが、美味しくいただけるんじゃないでしょうか。
まあ、いずれにしても飲みすぎれば二日酔いになるわけです。
(注1)ビオワインのワイナリーには、醸造のとき酸化防止剤を使わないところもあります。ただし、前述のようにリスクを伴い、また大変な管理の手間がかかるため、それほど多くのワインが流通しているとは考えられません。
(注2)ビオワインの中には、できるだけ亜硫酸塩が少量ですむように努力、研究しているワイナリーがあります。
(注3)国内には無添加ワインもあります。これは、日本の高い技術で開発した極細のフィルターで何度もワインを濾過し、残留酵母をなくすことで発酵を抑えるものです。これによりワインの旨味も取り除かれるのではないかという賛否両論があります。